この記事では、ボリンジャーバンドの基本的な計算方法から使い方、実際の取引における応用方法まで詳しく解説します。
ボリンジャーバンドを使うことで、現在の上昇の勢いや短期的にはどこまで上昇・下落する可能性があるのかといった、変動する値幅の予想が可能です。
筆者自身、1分足・5分足でドル円のスキャルピングをする際には、20期間と2σのボリンジャーバンドを使っています。
ボリンジャーバンドとは?
ボリンジャーバンドは、テクニカル分析で使用されるインジケーターの一つで、ジョン・ボリンジャーによって1980年代に開発されました。

このボリンジャーバンドは、価格の変動幅(ボラティリティ)を視覚的に捉え、価格が平均からどれだけ離れているかを示します。
ボリンジャーバンドは、移動平均線と標準偏差を使い、平均から乖離しているため相場が過熱している、現在の1つの上昇・下落の波がどこまで動く可能性があるかを標準偏差から予想することが可能です。
標準偏差は、データが平均からどれくらい離れているかを示す指標です。簡単に言うと、価格がどれだけ変動しているかを測るもので、数値が大きいほど価格の変動が大きいことを意味します。
なぜFX・CFD取引でボリンジャーバンドを使うのか?
ボリンジャーバンドは、特にFXやCFD取引において、価格が上昇または下降している際の過熱感や売られすぎを示すため有用です。
バンドが収縮しているときは、市場のボラティリティが低下しており、逆に拡張しているときはボラティリティが上昇しているサインとなります。
どんなインジケーター・オシレーターでも、強いトレンドが発生した場合は大きく利益せますが、レンジ相場・乱高下相場は苦手です。
ボリンジャーバンドは、バンドの縮小と拡大に対して、現在の値動きの形を組み合わせることで「勝ちやすいトレンド相場から、負けやすいレンジ相場・乱高下相場になった」と判断しやすい指標になると筆者自身は考えています。
ボリンジャーバンドの基本的な構成
ここではボリンジャーバンドの基本的な構成を以下の順に解説していきます。
ボリンジャーバンドは、どういった仕組みでボラティリティの変化と相場の過熱感を示すのか、その構成から紐解いていきましょう。
ボリンジャーバンドの3本のライン
ボリンジャーバンドは、移動平均線と標準偏差を基に計算されます。

まず、中央のラインは「20期間の単純移動平均線(20SMA)」を用いることが一般的です。
20SMAが価格の基準となり、相場の平均的な水準を示します。

次に、上下のバンドでボラティリティの予想値を示すのが「標準偏差」です。
この標準偏差を基に、上部バンドと下部バンドが計算され、通常「中央のラインから2σ(標準偏差)」の範囲に位置します。
移動平均線(MA)の役割と計算方法
移動平均線(MA:Moving Average)は、ボリンジャーバンドの中央線として使われ、価格の中心的な基準点となります。
基本設定である20SMA(20期間の単純移動平均線)の計算式は以下の通りです。
20期間の単純移動平均線=20期間の終値の合計÷20

20SMAの場合は、20期間の価格平均を示すため、以下の様にボリンジャーバンドの中央線を捉えることができます。
- 平均より高ければ「概ねこの価格で推移していたけど、今は平均より高い、上昇傾向にある」
- 平均より安ければ「概ねこの価格で推移していたけど、今は平均より安い、下落傾向にある」
ただし、20SMAより上で推移しているから上昇トレンド・下降トレンドと判断しないように注意しましょう。
あくまで20SMAと価格の位置関係は、20期間の平均に対して上昇傾向・下落傾向にあるかも示すものです。
上部バンド・下部バンドの役割と計算方法
標準偏差は、価格の変動を示す指標であり、市場のボラティリティを把握するために重要です。
平均に対して、どのぐらい離れているかを示すのが標準偏差の考え方になります。ボリンジャーバンドの基本設定である「2σ(シグマ)」の場合の計算式は以下の通りです。
- 上限バンド=移動平均+(2×標準偏差)
- 下限バンド=移動平均−(2×標準偏差)
標準偏差(σ)の計算方法
ボリンジャーバンドを計算するためには、まず標準偏差(σ)を求める必要があります。標準偏差とは、データのばらつきを示す指標であり、以下の手順で計算されます。
① 移動平均(MA)を求める
移動平均は、指定した期間(例:20期間)の終値の平均値を計算したものです。
移動平均(MA) = (終値の合計)÷(n日間)
例:20日移動平均
直近20日間の終値の合計を20で割った値。
② 各価格の「移動平均との差」を求める
各価格から移動平均を引いて、どの程度離れているかを求めます。
差 = 終値 – 移動平均(MA)
例:終値が110円で移動平均が105円なら、差は
110 – 105 = 5円
③ 各価格の差を2乗する
ばらつきを明確にするために、各差を2乗します。
(差の2乗)= (終値 – MA)²
例
(110 – 105)² = 25
(100 – 105)² = 25
④ 2乗した値の平均(分散)を求める
すべてのデータの2乗した値の平均を求めます。
分散 = (すべての(終値 – MA)²の合計)÷ n
⑤ 分散の平方根を取る(標準偏差 σ)
標準偏差(σ) = √(分散)
この標準偏差(σ)を使って、ボリンジャーバンドの±2σ(2シグマ)を計算します。
ボリンジャーバンドで重要なのは、平均からどのぐらい離れているかを示す標準偏差を用いていること、そして「ボラティリティがボリンジャーバンドの2σに収まる確率は約95.4%」ということです。

先に解説した20SMAだけでは「平均価格より高い・安いので上昇傾向・下落傾向にある」という見方しかできませんが、標準偏差が加わると、より多くの情報を得られます。
標準偏差を用いることで「平均価格から統計的にみると、ここまで動く可能性がある。この範囲までの値動きになりやすいから、現在の価格は過熱し過ぎの可能性がある。」このように値動きを評価することが可能です。
ボリンジャーバンドの使い方
ここでは、ボリンジャーバンドの視覚的な変化と価格の動きから分かる以下の3つの使い方を解説します。
ボリンジャーバンドは、価格と上下の位置関係とバンドの動きから現在の相場の状況を把握することができます。
価格がバンドの位置関係
ボリンジャーバンドでは、価格とバンドの位置関係から3つのシグナルが基本の使い方として知られています。
それぞれ詳しく解説していきます。
上限のバンドを超えた|買われすぎ(オーバーボート)
価格が上限バンドを越えた場合、ボリンジャーバンドでは買われすぎのシグナルとなります。

一般的に買われすぎのシグナルは、上昇局面の逆張りでショートを検討すると教科書的には言われています。
ただし、注意すべきなのは買われすぎは必ずしも下降トレンドへの転換を指すとは限らないことです。
例えば、経済指標で急騰した後は必然的にオーバーボートのシグナルがみられ、急騰後に急落する値動きは読者の方も一度は見たことがあるでしょう。
ボリンジャーバンドの2σにボラティリティが収まる確率は約95.4%ですから、基本はバンド内に戻る可能性が高いこと自体は容易に想像できます。
下限のバンドを超えた|売られすぎ(オーバーソールド)
価格が下限バンドを越えた場合、ボリンジャーバンドでは売られすぎのシグナルとなります。

一般的に売られすぎのシグナルは、下落局面の逆張りでロングを検討するものです。
オーバーボートと同様に、オーバーソールドについても上昇トレンドへの転換を示唆するシグナルとは言えません。
ボリンジャーバンドが指し示す「売られすぎ」とは、価格の平均とそのバラつき(標準偏差)から外れるほど大きな下落幅だったという意味です。
バンドの上下限と共に価格が推移|バンドウォーク
バンドウォークは、力強いトレンドが発生し、一貫性のある値動きで出現するボリンジャーバンドのシグナルです。

バンドウォークは、上昇トレンドであれば上限のバンドに張り付く形で価格が推移し、下降トレンドでは上記のドル円5分足チャートのように下限のバンドに張り付くように価格が推移します。
このバンドに張り付く価格の推移から分かるのは、平均と標準偏差から予想されるボラティリティの限界値まで一杯に力強く価格が上昇・下落しているという情報です。
バンドウォークが続く限りは、一貫性のある値動きとなるため、ポジションの含み益を伸ばしたり、場合によっては追加のエントリーを私なら検討します。

中身を見ると、上昇・下落の継続を示すプライスアクション「スラストアップ・スラストダウン」も確認できるため、バンドウォーク&スラストアップ・ダウンは素直についていきたい値動きです。
バンドの縮小と拡張
続いて、ボリンジャーバンドの縮小と拡張からは3つの見方ができます。
これらの3つのシグナルは、視覚的にボラティリティを捉えられるボリンジャーバンドならではの要素と言えるでしょう。
バンド幅が縮小|スクイーズ(収縮)
スクイーズはバンド幅が縮小し、ボラティリティが低下が小さくなっていることを示すボリンジャーバンドのシグナルです。

価格変動が落ち着くと、移動平均線からのバラつきを示す標準偏差も狭くなります。
スクイーズの出現は、ボラティリティが縮小しているため、取引しても利益が確保しづらい状況や、取引しても伸び悩むことで何度も無駄なポジションをとってしまうリスクが高いことを示します。
ただし、市場のボラティリティは縮小と拡大を繰り返すため、スクイーズの展開が長く続いた後のブレイクアウトには注目すべきです。
スクイーズが終了する際には、バンドウォークや後述するエクスパンションを伴った力強い値動きが発生する場合が多々あります。

例えば、上記のドル円5分足チャートでは、ボラティリティの縮小によってスクイーズが発生した後の展開に注目していみましょう。
- 弱気のプライスアクション「リバーサルハイ」が確認された後は下落
- 強気のプライスアクション「リバーサルロー」が確認された後は上昇しており
いずれもバンドウォークとエクスパンションの発生が確認できます。
バンド幅が拡大|エクスパンション(拡張)
スクイーズはバンド幅が拡大し、ボラティリティが高まっていることを示すボリンジャーバンドのシグナルです。

価格変動・移動平均線からのバラつき・標準偏差も大きくなることによって上下のバンド幅も大きくなります。
スクイーズからのエクスパンションへの移行は、ボラティリティの縮小もしくはレンジ相場を経て力強い上昇・下落が発生する場合が多いです。

トレンドは高値と安値の位置から判断するもので、エクスパンションの発生=トレンドの発生ではありません。
エクスパンション=ボラティリティの増加を示すため、値動きからとトレンドの転換や対局のトレンドとボラティリティの増加した報告が揃っていると大きく相場が動きやすいです。
バンド幅が最大化|ボージ(最大化)
ボージは、上下のバンド幅が最大化し、トレンドが終盤に差し掛かったことを示唆するシグナルです。

ボージは、上下のバンド幅が最大となった時を指しますが、何をもって最大とするかはボリンジャーバンドだけだと曖昧です。
そこで、ボージは「BBW(ボリンジャーバンドの幅)」を使って判断します。
(上限のバンドの値-下限のバンドの値)÷ 中央の単純移動平均線の値
上記の計算結果と125期間の最大値・最小値を上下に表示
ボージは、トレンドの終了が示唆される展開ですが、実際のチャートを見ると一時的にトレンドの勢いが弱まるものの、再びトレンドへ回帰する場合も多いです。

ボージの出現は、過去のバンド幅の推移から見て、ボラティリティが頭打ちしたため、上昇トレンドなら上方乖離の限界、下降乖離の限界に達したと考えるのが妥当でしょう。
5分足のボリンジャーバンド活用例
さて、ボリンジャーバンドの基礎知識について解説しました。次は、実戦でボリンジャーバンドを使う方法を考えてみましょう。
ボリンジャーバンドを使ったテクニカル分析や売買方法については、個々の自由に選択して、精度を高めるために探求すべきだと思います。
しかし、全くトレードアイデアが思い浮かばないといった方へ向けて、ボリンジャーバンドの活用例として、私が使っているドル円の5分足のトレード戦略をまとめました。
5分足の値動きとボリンジャーバンドの動き

5分足とボリンジャーバンドを使ったトレード手法では、私は概ね以下のルールを軸に取引していました。
上記を軸に、精度の向上と利益の幅を伸ばすために、いくつかの改善を私は行いました。
これれを実践することで、勝率は若干の改善となった程度でしたが、リターンは大きく改善できました。
インサイドとピラミッティング

トレンド方向に対して、インサイドする形の調整がある場合はピラミッティングを積極的に取り入れました。
ピラミッティングでは、全ポジションの合計が1回の取引当たりの許容損失を超えない範囲でロットを管理しています。
例えば、1万円が1回の取引の許容損失の場合、1個目のポジションの損切りを建値、トレンド転換となる高値・安値を損切り価格とし、追加のポジションを1万円の損切りとなる範囲のロット数でエントリーするといった形です。
20SMAでリバーサルならキープ

ボリンジャーバンドの20SMAでポジション方向へリバーサルが発生すれば、ポジションは持ち続けます。
なお、20SMA付近で2回以上のリバーサルが確認できた場合、トレンドラインが引けることが多いです。
そのため、トレンドラインを引ければ、トレンドラインが有効である限り、ポジションをキープするか追加のエントリーを検討します。
長期足と順行のみを取引
5分足を軸に取引するからと言って、常に取引チャンスに恵まれるとは限りません。
スキャルピングの精度を上げるためには、長期足と5分足のトレンド方向が揃っている順行のみを取引することが重要です。
長期足が上昇トレンドであれば、5分足でもロングを軸に戦略を考え、下降トレンドではその逆にショートを軸に戦略を考えます。
長期足に逆らわずに取引することで、勝率の向上が期待でき、長期足でトレンド方向へ高値・安値を更新する展開に乗ることができれば、スキャルピングでも大きく利益幅を」獲得することが可能です。
ボリンジャーバンドを活用する際の注意点
ここでは、ボリンジャーバンドを活用する際の注意点として以下の3つを解説していきます。
ボリンジャーバンドの開発者の意図と性質を踏まえて、使用時の注意点を確認します。
これらの注意点を理解せずにボリンジャーバンドを使うと、トレード手法への取り入れ方を迷走することになるため、必ず読んでおきましょう。
トレンドの判断は値動きを重視する
ボリンジャーバンドを使って取引をする際、トレンドの判断は実際の値動きを重視しましょう。
ボリンジャーバンドの生みの親であるジョン・ボリンジャー氏は、ボリンジャーバンドによるトレンドではなく、値動きを重視すべきといった方針を示しています。
例えば、ボリンジャーバンドの20SMAを価格が上に抜け、20SMAが右肩上がりとなったとしても、実際に価格が高値の切り上げを見せない限り、上昇トレンドへ転換したとは考えません。
ボリンジャーバンド以外のインジケーターの併用は避ける
ボリンジャーバンドは、ジョン・ボリンジャー氏いわく「インジケーターはボリンジャーバンドだけを使うべきだ」といった考え方があります。
私自身もボリンジャーバンドを使う場合は、ボリンジャーバンド以外のインジケーターを使いませんし、他のインジケーターを使う必要性も感じません。
相場の過熱もトレンドも、どちらもボリンジャーバンドと値動きから得られる情報で十分です。
設定を意味なく変更しない
インジケーターを使う上で、迷われやすいのが設定値です。
ジョン・ボリンジャー氏は、ボリンジャーバンドの設定についても言及しています。
開発者としては、基本となる20SMAと2σのみで十分とのことです。

私自身もその考えに同じ意見で、実際にチャートを見れば基本的に値動きは2σに収まっていますし、逆に収まらなかったと言って、その平均的な値幅から乖離する動きを狙って取引したいとも思いません。
ボリンジャーバンドの開発者:ジョン・ボリンジャー
最後にボリンジャーバンドの開発者ジョン・ボリンジャー氏についてまとめておきます。
多くのトレーダーから愛されるボリンジャーバンドの開発者の過去と現在について深堀りしてみましょう。
ジョン・ボリンジャーの経歴とストーリー
ジョン・ボリンジャーは、元々26歳まで小説家として活動しており、小説家を続けるか迷っている中、友人がブローカーだったことをキッカケにトレーダーへと方向転換をしました。
1980年、30歳には専業トレーダーとなります。ボリンジャーバンドは、彼が専業トレーダーとなった4年後の1984年に開発されます。
ボリンジャーバンドの開発後、彼は「Financial News Network」というオーストラリアの金融メディアにて、7年間チーフアナリストを担当しました。
現在は、投資会社ボリンジャーキャピタルマネジメントを設立し、運用から投資に関する教育、コンサルまで幅広いビジネスを展開し、成功しています。
また、アナリストが取得する資格として知られるCFA公認金融アナリストおよびCMT公認マーケットアナリストを世界で初めて両方取得したのもジョン・ボリンジャー氏です。
ジョン・ボリンジャーの破産は嘘
本記事執筆時点では75歳になるジョン・ボリンジャー氏について破産の噂が広く出回っています。
理論やインジケーターの開発者に関する破産の噂をよくある話ですが、ジョン・ボリンジャーの破産についても完全な嘘です。

実際にジョン・ボリンジャー氏にリプライで破産の事実確認をした方がいました。
彼曰く「Rumors of bankruptcy are of a similar veracity to rumors of my death.(破産の噂は私の死の噂と同じくらい真実味がある。)」とのこと。
投資・投機の著名人に関する破産の噂は多いですが、ほとんどは嘘です。
ジョン・ボリンジャーが語るボリンジャーバンドの設定とは?
ボリンジャーバンドの設定については、先に何度がお伝えしましたがジョン・ボリンジャー氏が推奨する設定は以下の通りです。
- 期間設定:20期間
- 移動平均線の種類(中央線):単純移動平均線(SMA)
- 標準偏差:±2σ
ジョン・ボリンジャー氏としては、この基本設定で十分と考えているとのこと。
インジケーターやテクニカル分析について様々な意見があるのは承知していますが、私自身も基本設定以外でボリンジャーバンドを使う必要はないと考えています。
見るべき情報が多いと迅速かつ正しい取引の判断は鈍ります。それだけ売買シグナルが多ければ、雑な取引の試行回数が増え、取引の精度は落ちやすいです。
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